バリトンは、1700年代に用いられたヨーロッパの古楽器で、主にオーストリアやドイツなどで使われていた。 演奏用の弦は6本で、ネックの裏側にも弦が張られている。床に支えるための長いエンドピンはなく、演奏時は両足で挟んで固定する。 バリトンと言えば 低音の声域歌手を思い浮かべるだろうが、これは baritone であり、楽器のバリトンは baryton である。また、イタリアでは、ヴィオラ・ディ・ボルドーネ(Viola di bordone)と呼ばれていた。 オーストリアの作曲家 ハイドン(Franz Joseph Haydn 1732-1809)は、この楽器のための楽曲を多く残している。
裏側の弦は 親指で はじく ‥‥
ネックの裏側にも弦が張り巡らされている楽器は、バリトンだけではなく他にもある。これは共鳴弦であり、旋律用の弦の音を補強し音に広がりを持たせるためだ。 ただし、バリトンは違う。背面に張られたバリトンの弦は、共鳴弦としての役割もあるが、弦をはじいて音を出すのである。はじくのは裏側に位置する親指。 なんと、弓奏楽器と、撥弦楽器を併せ持った欲張り楽器だったのだ。
脚に挟んで演奏する 弓奏楽器
はじく
こする
たたく
弦楽器図鑑(擦弦楽器/弓奏楽器)IROMBOOK